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民法703条では,「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け,そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は,その利益の存する限度において,これを返還する義務を負う。」と規定されています。

つまり,正当な理由も無く,他人の損失によって利益を得た人は,その損失を受けた人に対して,受けた利益を返還しなければならないということです。

この正当な理由のない,条文で言えば法律上の原因がない利得のことを「不当利得」といい,この不当利得を返すよう請求する権利のことを「不当利得返還請求権」といいます

この不当利得返還請求をおこなう場合には、以下4つの要件を満たす必要があります。

不当利得の要件

  • 損失者に損失が生じたこと(債務者に損失がある)
  • 利得者が利益を得たこと(貸金業者が利益を出した)
  • 利得と損失との間に因果関係があること(債務者の損失と貸金業者の利益に関係性がある)
  • 利得に法律上の原因がないこと(法定金利内での利益であること)

以上の4つを満たすことによって、債務者は貸金業者に対し不当利得を返還するように請求する権利を取得することになります。

ただし,前記民法703条にも規定されているように,不当利得返還を請求できるのは,「その利益の存する限度」に限定されるのが原則です。

要するに,利得者のもとに残っている利益だけを返還請求できるに過ぎないというわけです。

したがって,利得者のもとに残っていない利益については返還を請求できないということになりますが、これを「現存利益」といいます。

ただし,利得者が,民法704条の「悪意の受益者」に当たる場合には別で、この場合には,現存利益のみならず,利得者が得た利益の全部の返還を請求できます。

さらにその利益全部に利息を付けて返還するように請求することができます。

過払い金と不当利得

過払い金返還請求とは,利息制限法所定の制限利率を超える利息を返してもらうということです。

利息制限法に違反しているということは,その部分の利息については貸金業者にそれを受領する「法律上の原因」がないということで,不当利得であるということになります。

つまり,過払金返還請求権とは,法的に言うと,不当利得返還請求権であるということです。